富士宮市の観光スポット|富士山の湧水と信仰、滝と桜をたどる
目次
この町の観光スポット(北から順)
番号は記事の紹介順(北から順)と同じです。ピンを押すと名前が出ます。位置はおおよそのものです。
- 人穴富士講遺跡 富士山麓の溶岩洞穴と、江戸の富士講の人々が残した碑塔群。世界遺産の構成資産でもある信仰の遺跡。
- 田貫湖 朝霧高原の一角に広がる周囲約3.3キロの湖。春と夏の朝、富士山の頂に太陽が重なるダイヤモンド富士で知られる。
- 白糸の滝 幅約200メートルにわたり、岩壁から水が糸のように流れ落ちる名瀑。富士山の地下水が湧き出す世界遺産の滝。
- 音止の滝 芝川の本流が落差約25メートルで落ちる豪快な滝。曽我兄弟の密談の逸話が名の由来として語られる。
- 狩宿の下馬桜 樹齢800年を超えるとされる山桜の古木。国の特別天然記念物で、源頼朝が馬をつないだという伝承が残る。
- 山宮浅間神社 富士山本宮浅間大社の元宮と伝わる古社。本殿を持たず、富士山を直接拝む遥拝所の形が今も残る。
- 富士山本宮浅間大社と湧玉池 全国の浅間神社の総本社で、富士山そのものを神体とする駿河国一宮。境内の湧玉池は、特別天然記念物の湧水。
この町の基本情報(所在地・最終確認日・ご注意)を見る
- 所在地
- 静岡県富士宮市
- 最終確認
- 2026.10.05
- ご注意
- 営業時間・料金・休業日は変わりやすいため載せていません。お出かけ前に各施設の公式サイトでご確認ください。
富士宮市ってどんな町?
富士宮市は、静岡県の東部、富士山の南西のふもとに広がる市です。市域の標高差が3741メートルあり、日本で最も標高差の大きい自治体として知られます。市の北部は朝霧高原の草原と山地、中心部は富士山からの湧水に恵まれた市街地で、同じ市のなかでも景色も気候も大きく変わります。
市の中心にあるのは、富士山本宮浅間大社です。この神社の門前町として栄えたことが、「富士の宮」という旧い社名とともに、市の名の由来になりました。2013年には、富士山が世界文化遺産に登録され、市内の6つの場所が構成資産に含まれています。この記事では、見どころを緯度の大きい順、つまり北から順に紹介します。朝霧高原の湖から始まり、滝、桜、遥拝所、そして湧水の池へと、山から里へ下る道筋です。
1. 人穴富士講遺跡
人穴は、富士山の噴火でできた溶岩の洞穴です。16世紀から17世紀にかけて、行者の角行がここで修行を行い、富士の神の啓示を得て、没した場所と伝えられます。そのため、のちに江戸などで広がった富士講の信者たちにとって、浄土のような聖地になりました。『吾妻鏡』にも、浅間の神の住む場所と見られていたことが記されています。
洞穴は崩れる恐れがあるため、現在は入ることができません。奥行きは最奥まで約80〜90メートルとされ、内部には祠や碑塔、石仏が祀られています。近くの浅間神社の境内には、富士講の信者の墓碑が300以上あると言われ、碑塔は233基を数えます。建てられた年が分かるものでは、江戸時代後期の富士講が盛んだった頃のものが多く、刻まれた地名の6割近くは江戸の下町でした。静岡県内の地名は、わずか1基です。
遠く離れた江戸の人々が、わざわざこの洞穴を目指して参拝に通ったという事実が、碑の数から見えてきます。信仰の遺跡であり、墓所でもある場所です。静かに手を合わせる気持ちで訪れ、立ち入りが禁じられている区域には入らないようにしてください。
2. 田貫湖
田貫湖は、富士山の西のふもと、朝霧高原の一角にある湖です。周囲は約3.3キロメートル。もとは狸沼や田貫沼と呼ばれた小さな沼でしたが、1923年の関東大震災のあとで周辺の水が減ったことから、農業用水を確保するために1935年ごろから堤を築いて広げられ、いまの人造湖になりました。
この一帯の地形は、およそ2万年前の富士山の山体崩壊で生まれた土石の流れが、西の天子山地に行く手を阻まれて積もったものと説明されます。水はけが悪い台地ができ、沼や湿地が生まれたわけです。湖は富士山の大沢崩れのほぼ正面にあたり、険しい山容を望むのに向いています。4月20日と8月20日ごろの晴れた朝には、富士山の頂に朝日が重なる「ダイヤモンド富士」が見られるとして、多くの人が集まります。
湖畔の田貫神社には、南朝の皇族とされる尹良親王が、この土地の豪族の館に身を寄せたという言い伝えが残ります。史実かどうかは確かめられていませんが、湖の周りの静かな景色には、そうした物語を受け止める余白があるように感じられます。春にはツツジが咲き、自転車で湖を一周する楽しみ方もあります。
3. 白糸の滝
白糸の滝は、幅約200メートル、高さ約20メートルにわたって、無数の細い流れが岩壁からこぼれ落ちる滝です。水量は毎秒約1.5トンとされ、流れ出ているのは、富士山に降った雨や雪どけ水が地下を通ってきた水です。古い泥流の層の上に、のちの溶岩流が重なり、その層の隙間から水が染み出している様子が、絹糸を垂らしたように見えることから、この名がつきました。
滝は1936年に国の名勝・天然記念物に指定され、1990年には日本の滝百選に選ばれました。2013年には「富士山」の構成資産の一つとして世界文化遺産に登録されています。江戸時代には、富士講の信者たちが巡礼に訪れる場所でもありました。滝壺の近くには、富士講の行者・食行身禄の供養碑が残ります。
絵のモチーフとしても愛され、江戸時代の画家・池大雅が、富士山とともに白糸の滝を描いたことで、この画題が広まったと言われます。滝のすぐ上の岩窟には、源頼朝が髪の乱れを直したと伝わる「お鬢水」が湧いています。滝壺周辺は、過去に台風や地震で立入が制限されたこともあるため、安全な通路から鑑賞してください。
4. 音止の滝
音止の滝は、芝川の本流が落差約25メートルで流れ落ちる滝です。繊細な白糸の滝とは対照的に、力強く勢いのある姿が特徴で、国の名勝と天然記念物に指定され、日本の滝百選にも数えられます。白糸の滝からは歩いて数分ほどの近さにあります。
名前の由来には、鎌倉時代の逸話が語られます。1193年、源頼朝が催した富士の巻狩りのとき、曽我祐成・時致の兄弟が父の仇の工藤祐経を討つ相談をしていました。しかし滝の轟音で話が聞き取れず、神に念じたところ、たちまち音が止んだといいます。兄弟は無事に本懐を遂げたとされます。滝の東側には、兄弟が隠れていたと伝わる「曽我の隠れ岩」があります。
これは伝説であり、実際の経緯を示す史料があるわけではありません。ただ、轟音のなかで声をひそめる兄弟の姿を想像すると、この滝が、人の決意と世の静けさを結びつける舞台として語り継がれてきた理由が分かる気がします。仇討ちの物語は、のちに歌舞伎や能、浄瑠璃の題材として広く伝わりました。
5. 狩宿の下馬桜
狩宿の下馬桜は、富士宮市狩宿にある一本の桜で、正式な和名をアカメシロバヤマザクラといいます。樹齢は800年を超えるとされる日本最古級の山桜で、1922年に国の天然記念物に指定され、1952年には特別天然記念物に格上げされました。日本五大桜の一つとして数えられています。
名前の由来は、1193年に源頼朝が富士の巻狩りを行った際、この場所に立ち寄って馬から下りた、あるいは馬をつないだという伝承にあります。桜に駒をつなぎとめた、という話から、駒止めの桜とも呼ばれてきました。開花は4月中旬ごろとされ、桜越しに富士山を望む景色は、環境省の「富士山がある風景100選」にも選ばれています。
文部省の昔の調査では、幹の太さは8メートルを超え、枝は広く張り出していたと記録されています。その後、度重なる台風で樹勢は弱ってきました。老木は、時間の重みをそのまま姿にしたような存在です。訪れるときは、根元を踏み固めないように、柵の外から静かに眺めてください。
6. 山宮浅間神社
山宮浅間神社は、富士山本宮浅間大社の「元宮」とされる神社です。社伝では、806年に坂上田村麻呂が平城天皇の命を受けて、神をこの地から現在の浅間大社の場所に遷したと伝えられ、浅間大社ができる前に最初にお祀りされていた場所と言われます。それ以前の伝承では、日本武尊が東国遠征の途中で窮地に陥り、富士の神に祈って難を逃れたことから、この地に祭祀の場を設けたとも語られます。
この神社の最大の特徴は、本殿に当たる建物がないことです。溶岩の石を長方形に組んだ遥拝所があり、富士山の方向に祭壇が置かれています。神が宿る山を直接に拝むという、原始的な信仰の形を残していると考えられています。2008年度の発掘調査では、12世紀ごろの土器が見つかり、祭祀に使われたと見られています。
かつては、浅間大社と山宮を往復する「山宮御神幸」という神事があり、神を古い鎮座地に里帰りさせる意味を持っていました。1873年まで行われていたとされます。2013年には世界遺産の構成資産になりました。現役の神社ですので、静かな参拝を心がけてください。
7. 富士山本宮浅間大社と湧玉池
富士山本宮浅間大社は、全国に数ある浅間神社の総本社で、富士山を神体山として祀る駿河国一宮です。祭神は木花之佐久夜毘売命で、桜にちなむ神とされ、境内には約500本の桜が奉納されています。本宮は富士宮市街にあり、山頂の奥宮は富士山の頂にあって、8合目以上の広大な土地が社地になっています。本殿は徳川家康の造営で、浅間造という独特の様式で、国の重要文化財です。
境内にある湧玉池は、富士山の雪どけ水の伏流水が湧き出す池で、1952年に国の特別天然記念物に指定されました。水量は1日に約30万トンとされ、水温は年間を通して13度前後で安定しています。この水は、神田川の水源にもなっています。古くは、富士山に登る前の道者たちが、この池で身を清める禊の場としていました。
富士講の信者たちが池の水で垢離をとった様子は、古い絵図にも描かれています。市の名前の由来にもなったこの社は、富士山に登る者の出発点でもありました。現役の神社ですので、参拝の作法を守り、池の水や植物を傷つけないよう大切に歩いてください。
名物・食べ物・飲み物
富士宮の味といえば、まず富士宮やきそばです。専用の蒸し麺を使い、肉かすと呼ばれる豚の脂のかすや、キャベツを炒め、仕上げにいわしや鯖の削り粉をかけるのが特徴とされます。戦後に焼きそばを出す店が増え、1999年に地元で命名されて、まちおこしの活動を通じて知られるようになりました。ご当地グルメの大会では、最初の2回で1位になった実績があります。
もう一つの名物はニジマスです。富士山の湧水に恵まれた市は、ニジマスの生産量が全国一位とされ、「市の魚」に指定されています。朝霧高原では、冷涼な気候と火山灰の土を生かした酪農が盛んで、牛乳や乳製品のブランド化も進んでいます。
家庭料理では、富士山の火山灰土で育った落花生を茹でた「ゆで落花生」や、すりつぶした落花生をなますと和えた「落花生なます」が知られます。市内には湧水を仕込み水に使う酒蔵もあり、水の豊かさが食の土台になっていると感じられます。
珍しい生き物・自然
富士宮の自然の主役は、富士山と、そこから湧き出す水です。市域の約半分は富士箱根伊豆国立公園に含まれ、湧玉池や白糸の滝など、地下水が地表に現れる場所が点在します。湧玉池の水は、年間を通してほとんど増減せず、水温も安定しています。
北部の朝霧高原は、標高700〜1000メートルに広がる高原で、霧が出やすいことが名の由来とされます。茅の群生地は、「ふるさと文化財の森」に指定されています。また、田貫湖の近くにある小田貫湿原は、富士山の西麓に残る唯一の湿原とされ、環境省の重要湿地に選ばれています。
富士山には、大沢崩れという大きな崩壊地があり、土砂災害の危険があるため、国が継続して砂防事業を行っています。美しい山の裏には、侵食と災害に向き合う人々の仕事があります。
そのほか、この町の特筆すべきこと
富士宮は、1193年に源頼朝が行った富士の巻狩りの舞台でもあります。この狩りの最中に曽我兄弟の仇討ちが起こったと伝えられ、物語は歌舞伎や能、浄瑠璃などで広く語られました。富士の裾野の広大な草原が、この物語の背景として想像されてきたことが分かります。
市内には、白糸地区の人が三椏の群生地を見つけたことをきっかけに、和紙の一種の駿河半紙が作られるようになったという歴史もあります。富士山の水が、製紙業の盛んな土地の基礎になったという話です。
富士登山道の一つ、富士宮口もこの市にあります。富士山の南の玄関口として、古くから大宮・村山口の登拝道が通っていました。環境省が選んだ「富士山がある風景100選」のうち、市内で17か所が選ばれており、静岡県側では最多とされます。
夜の顔:この町の怪談と心霊スポット
ここまで、富士宮市の昼の顔を歩いてきました。湖、聖地の洞穴、滝、桜、遥拝所、そして湧水の社。どの場所にも、富士山を畏れ、敬い、そして頼ってきた人々の祈りと暮らしが重なっています。
その厚みは、夜の顔にもつながります。当サイトでは、音止の滝と曽我兄弟の話や、人穴の記録などを扱っています。当サイトの見方では、怪談とは土地の歴史や地形が、人の心に落とした影のようなものです。巨大な山と、その下を流れる水の暗がりには、人が物語を預けたくなる力があるのでしょう。
鴉番組では、実話怪談や心霊スポットを、行くためではなく記録するために載せています。昼の景色を知ったうえで、夜の物語も読んでみてください。
お出かけの前に
営業時間・料金・休業日・アクセスは変わりやすいため、この記事には載せていません。お出かけの前に、各施設や自治体の公式サイトで最新の情報をご確認ください。天候や災害の影響で立入が制限されている場所もあります。
よくある質問
Q. 富士宮市の観光は、どの順番で回ると効率がよいですか?
A. この記事は北から順に紹介しています。朝霧高原方面の湖や滝、市街地の浅間大社と湧玉池と、エリアごとにまとめると回りやすくなります。北部は距離があるため、移動手段や季節の道路状況を、公式の観光案内で確認してください。
Q. 富士宮市の名物は何ですか?
A. 富士宮やきそば、ニジマス、朝霧高原の乳製品がよく知られています。家庭料理のゆで落花生もあります。店ごとの提供状況は変わるため、出かける前に最新の情報を確認してください。
Q. 人穴の洞穴の中に入れますか?
A. 洞穴は崩れる恐れがあるため、現在は入れません。碑塔群の区域も立入が制限されています。史跡として静かに外から見学し、案内の指示に従ってください。
参考にした公式サイト・資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/富士宮市
https://ja.wikipedia.org/wiki/富士山本宮浅間大社
https://ja.wikipedia.org/wiki/湧玉池
https://ja.wikipedia.org/wiki/山宮浅間神社
https://ja.wikipedia.org/wiki/白糸の滝_(静岡県)
https://ja.wikipedia.org/wiki/音止の滝
https://ja.wikipedia.org/wiki/狩宿の下馬桜
https://ja.wikipedia.org/wiki/田貫湖
https://ja.wikipedia.org/wiki/人穴富士講遺跡
https://ja.wikipedia.org/wiki/朝霧高原
https://ja.wikipedia.org/wiki/富士宮やきそば
この周辺の心霊スポット
昼の顔とは別に、この土地には夜の顔もあります。興味があれば、記録として読んでみてください。立入に注意が必要な場所も含まれます。
